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★ 羊たちの沈黙(原題:THE SILENCE OF THE LAMBS
   監 督 :ジョナサン・デミ
   出 演 :ジョディ・フォスター、アンソニー・ホプキンス、
   ジャンル:ミステリー・サスペンス
   1990年  アメリカ








注)以下、ネタバレだらけです!

【あらすじ】

 天才的頭脳の中に狂気をも共存させている元心理学者(だったかな?)の犯罪者レクター博士(アンソニー・ホプキンス)が獄中から、FBI の見習い捜査官クラリス(ジョディ・フォスター)の連続殺人犯捜査を、間接的に手助けするのですが、このレクターは隙を見せた相手を食っちゃうという危険人物なので、常に鉄格子や分厚いガラスやらで囲われていて、クラリスも常に一定の距離を保っています。

 レクター博士の的を得た助言もあり、追っていた連続殺人事件の真相に追いついていくクラリス。
 しかし、聞き込みのために尋ねた男が実は真犯人で、照明を落した暗がりの中で暗視カメラを付けた男が銃を持って迫ってきます!


【感想】  
 クラリスとレクター博士には、ただ一度、一瞬の物理的接触があるのです。

 レクター博士の移送中の夜、広い部屋の中央の四角い部屋状の鉄格子の中の彼にクラリスが質問し、彼が示唆に富んだ答えをしています。
 そこへ、自分を売り込むために、クラリスとレクターの会話を盗聴して重要な情報を横取りした(と思っている)男が数人の部下と現れ、邪魔な彼女を力ずくで部屋の外に連れ出そうとします。

 その時、レクター博士が突然、クラリスが以前に渡した事件の資料を「返すよ!」と鉄格子の隙間から差し出します。
 男たちの手を振りほどいて鉄格子まで駆けもどり、書類をつかんだクラリスの手を、一瞬だがレクター博士の指がそっと触るのです!

 この一瞬のなんとセクシーな事か !!




 そして、博士は「グッバイ、クラリス」と言います。
 この後、脱走する彼は、これが FBI の彼女に会う最後の機会であることを思って言ったのでしょう。


 クラリスは博士を異常な犯罪者として接し恐れてもいますが、一方で率直に接しどこか尊敬の念をいだいています。

 博士にとって彼女は、最初に会った時からのお気に入りであり、愛情さえも持ってしまったのでしょう。
 後日、クラリスの訓練所卒業パーティーの席に、逃亡中という危険な立場からお祝いの電話をいれた理由も頷けると思います。
 和風に言えば、許されぬ恋から身を引いた、ということになるでしょう … 。


 私は「一瞬」が強く記憶に残ってはいますが、この映画は単なるサスペンス物ではなくいろいろな伏線のある名作だと思います。
 見始めたら最後まで目が離せなくなる最上級の映画と言っていいでしょう。(私が言うまでもなく、数々の賞を受けています!)

 「タクシードライバー」から知っていたジョディ・フォスターのファンになってしまったのはこの映画のせいですし、一方のアンソニー・ホプキンスはこの作品の重い演技とは違う姿を「世界最速のインディアン」で見せてくれています。


 どちらも、長く活躍している、名優中の名優と言ってもよいでしょう。

 余談であるけれど、この傑作の後、前後を描いた映画が複数(多分2本?)製作されましたが、1本だけ見た限りではこの作品には全く及ばないものでした。



  2018.09.    ................ 傑作映画館の目次ページへ